アメリカのオレゴン州ポートランド市は「脱クルマ社会」に挑み成功している都市だ。
行きすぎた車社会が市の中心街を疲弊させていることに気づいたポートランドの市民は、都心を流れる川沿いの高速道路を廃止して公園とし、街の中心部の約100m角を占拠していた駐車場をやめてれんが舗装の広場とした。さらに、中心街に公共交通の無料地区を設けた。この総面積は東京の日比谷公園17個分強にも相当する。
ポートランドの中心街はあらゆる年齢層の人々でにぎわっている。車の排ガスのにおいはほとんどなく、さわやか極まりない。
公共交通機関は、バスとスーパー路面電車。車両構造が低床だから、まるで歩道が駅のホームになった感じで、高齢者や障害者が介助なしに外出を楽しめる。
無料地区導入の波及効果は大きい。都心への乗り入れ車が減り、駐車場不足が解消に向かった結果、移動が楽になったことを評価して中心市街地への事業所進出が続いた。人出が増えたせいで商店街も活性化した。
環境問題の解決に決め手を欠き、中心市街地の商店街のポテンシャル低下が止まらない日本の中核都市でこそ、公共交通無料化の施策が絶大な効果を発揮するような予感がする。
(7月7日/朝日新聞より) |