1991年1月に刊行が開始された「ワイド版岩波文庫」は、老眼のため小さい字が読みづらくなった人たちの味方。判型も活字も普通の文庫の1.2倍のサイズを用い、これまでに200点以上が出版されています。
「当時、岩波文庫の読者が年配層に移りつつあったんです。文庫は活字が小さいからもう読めないとあきらめていたかたたちから、感謝の手紙をずいぶんいただきました」
「カルチャースクールのテキストに採用されたためよく売れたというケースも。余白も普通の文庫の1.2倍なので、書き込みをするのにも便利です」(岩波書店)
最近は、団塊の世代がワイド版の読者層に。読者カードの分析によると、7、80歳代が古典や仏教に関心が深いのと対照的に、50代は漱石や鴎外、ゲーテなどの文学作品をワイド版で読みたがっているといいます。
出版不況の原因について「仕事が忙しくて時間がないとか、小遣いが少ないとか、あるいは老眼になったからとか」。少なくとも、大きな活字を使えば、読書の習慣を取り戻す助けになるかもしれません。
(8月29日/秋田魁新報より) |