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(補助犬)
「身体障害者補助犬法」施行
 障害者の自立を助ける盲導犬、介助犬、聴導犬の公共施設や交通機関への同伴を保障する「身体障害者補助犬法」が10月1日に施行。今までペットと同じ扱いだった補助犬が法的に位置づけられ、障害者の社会参加の機会が広がるという期待の一方で、罰則のない法律で効果があるのか、質の高い補助犬の育成態勢をどう築いていくかなど課題も抱えてスタート。

 千葉市花見川区役所内で市民課職員、山口亜紀彦さん(30)は23歳の時、交通事故による脊髄(せきずい)損傷で下半身にまひが残った。

 採用された区役所に介助犬オリーブの同伴を希望したが、役所は「ほかの職員が手伝うから」と認めなかった。山口さんは「みんな親切だけれど、窓口対応や電話で忙しい時間に『ペン1本落としたので拾って』とは頼みにくい」と訴え続けた。平成13年10月、自治体としては全国で初めて同伴が認められた。

 法律がどこまで浸透しているか分からない不安もある。近所の飲食店でオリーブの入店を断られた。「補助犬法もできた」と説明したが、「苦情が出るかもしれないし、小さな店ではスペースの面でも対応は難しい」と言われた。
 民間事業所・住宅での受け入れが「義務」ではなく「努力」とされたことや罰則がないことも残念。
 他に先駆けて、受け入れてきたダイエーにも同業者から「話を聞かせて欲しい」という申し入れが相次いでいる。同社では盲導犬は93年、聴導犬は97年、介助犬は99年から全店で同伴を認めた。社内で独自に基準とマニュアルを作り、全店に配った。
 介助犬は、商品を口でくわえて運ぶこともある。ダイエーは食料品や衣料品など以外はくわえても構わない、としている。

 国内での育成の歴史が短い介助犬、聴導犬は実働数がまだ少ない。昨年、厚生労働省の補助事業で東京医科歯科大の藤田紘一郎教授が中心になって実施した調査では、介助犬の使用希望者数を4万1千人と推計。寄付に頼っている育成団体の態勢強化やトレーナーの養成は急務。



 <身体障害者補助犬法>
 視覚障害者の歩行誘導を行う盲導犬、肢体障害者のために物の拾い上げや衣服の着脱補助、スイッチの操作などをする介助犬、聴覚障害者に電話の音やブザー音などを伝える聴導犬の同伴を、公共の施設や交通機関が拒むことを禁じた法律。あわせて訓練事業者や使用者の義務も定めた。これまで盲導犬は道路交通法で定義され、国家公安委員会指定の団体が認定していたが、介助犬、聴導犬は育成団体がそれぞれ独自に認定していた。来年10月からは、不特定多数が利用する商業施設や宿泊施設も受け入れが義務付けられる。厚生労働省によると国内の実働数は盲導犬895頭、介助犬26頭、聴導犬19頭。

(10月1日/朝日新聞より)


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