車いすの進化がめざましい。起立機能を備えたスタンドアップ車いすで新たな世界を見いだす身体障害者がいます。
神奈川県厚木市の県総合リハビリテーションセンターで理学療法士と訓練中の丸山さんは27年前のバイク事故で座りっぱなしの生活でしたが、立ち上がることで社会的な不利などを軽減でき、「体全体が気持ちよく感じた」と喜んでいます。
北海道美唄市の料理人である宍戸さんは3年前の交通事故から社会復帰。今年1月、自分の店を持つ夢をかなえました。北京ダックなど本格的な中華料理を提供する店内は、調理場も含めてバリアフリー。スタンドアップ車いすを操り、店を切り盛りしています。
25年前のバイク事故で車いす生活をしている札幌市のミュージシャン、渡部さんのスタンドアップ車いすはスタイリッシュなスウェーデン製。「サックス出前」で老人ホームや学校を巡回。舞台のない会場でも演奏姿を見てもらうために立つことにこだわっています。恐る恐るでしたが、「やっぱり、立って吹く姿はかっこいい」。
自身も車いすで生活する東京都の山崎さんは外国製車いすを輸入、普及させる会社を経営。年3、4回海外へ渡り、欧米の最新情報を紹介。なかでも米国製の車いすは、身障者のニーズに応じていて需要が多い。世界一のスタンディング車いすといわれるスイス製は、多機能、高性能を誇ります。
米医薬関連メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソンは来春、従来の車いすでは無理だった段差乗り越えや不整地走行、階段昇降が可能な新型の移動機器アイボットを日本で売り出す予定。画期的なのは内蔵されたコンピューターでバランスを制御し、立っている人と同じ高さでコミュニケーションできる点。身障者が自力で健常者の目線に近づけることは大きな意味を持っています。
(9月30日から10月6日/朝日新聞より) |