「福祉用具法」が93年10月に施行されてから10年たった。車いすやつえ、介護用ベット、福祉車両といった福祉用具を普及させ、暮らしに不便さをもつ人を支えようという趣旨でできた画期的な法律であった。しかし、産業界の取り組みは、経済性という壁を乗り越えられていないように思える。
福祉用具全体の市場規模も拡大し、ユニバーサルデザイン(UD)の商品が数多く見られるようになった割に、福祉用具の地位は向上していない。
企業の取り組みをUDを例に見てみると、高齢者・障害者と健常者が、共に使いやすい商品になりにくい理由は2つある。
第一は使い勝手。汎用品に近いので産業界が容易に取り組める半面、それぞれの障害や不便さに狭い範囲でしか対応できないという限界。
第二は企業の姿勢。UDは福祉用具の製品開発に比べ、経済性の調和の範囲内である。 しかし、こうしたなか、共用品作りに取り組む機関やメンバーが中心となり、国際標準化機構に日本が提案し、「規格作成における高齢者・障害者のニーズへの配慮ガイドライン」が国際的に定められた。これは、今春、日本工業規格にも盛り込まれている。
企業も、不便さや障害にどこまで踏み込んで向き合うか、が問われている。
(10月25日/朝日新聞より) |