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(福祉用具)

福祉用具、適性利用へ 

事業者、業界とも知恵を

 「要支援では、電動ベッドのレンタルが認められないかもしれないと考えると、使った方がいい人でも、ケアプランに入れるのをためらってしまう」。九州地方のある市でケアマネジャーとして働くAさんは、困惑した様子で語っています。

  発端は、厚生労働省が作った、福祉用具の給付に関するガイドライン。電動ベッドや車いすなどについては、「要支援」の人への貸与は「使用が想定しにくい」としています。

  厚労省は、「要支援だから全く認めない、ということではない。使うべき理由があれば、かまわない」と説明します。ですが、Aさんのいる市では、要支援の人への新たなベッドのレンタルはほとんど認められなくなり、これまで利用していた物を返却させられるケースも出てきました。Aさんは、「状態は一人ひとり違うのに、要介護度だけで判断するのはおかしい」と話します。

  福祉用具の利用は、介護保険導入以来、急増しています。国のガイドラインをきっかけにした過剰な利用制限は、ほかの地域でもあり得ることです。

  確かに、用具がその人には不要だったり、体の状態や目的に合わなかったり、という不適切なレンタルは少なくありません。しかし、その是正は本来、事業者やケアマネージャーが責任を持って判断できるようにレベルアップすることや、行政が理学療法士らの拠点を整備することなど、専門職がかかわる仕組みづくりを通して行われるべきものです。

  一方、業界には、利用者のニーズに合う用具の供給にも取り組んで欲しいと思います。
 例えば介護ベッド。大半の人は、手すりか高さ調節機能があれば十分だといいます。しかし、現実に貸し出されているのは、背上げ・膝上げ、高さ調節機能がついた、30万−35万円する「二モーター」「三モーター」ベッドが圧倒的で、マットも合わせて利用者負担が月額1500−2000円程度かかります。機能を省いたベッドが無いためです。
 ある作業療法士は、メーカーの担当者に、「高さ調節だけのベッドを安く作れないか」と相談しましたが、「開発費が変わらないので、安い製品は作れない」と断られたといいます。
 人の手を借りずに自分で出来ることが増やせる福祉用具や住宅改修は、まさに介護保険が目指す「自立支援」です。その人に必要なサービスを効率的に提供するために、それぞれが何をすべきか、改めて考えるべきです。

(6月22日 読売新聞)




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