国際アルツハイマー病協会の第22回国際会議が、10月15日から3日間の日程で「ぼけ老人を抱える家族の会」などの主催により、京都で開かれます。
国内の痴呆性高齢者は年々増加傾向にあります。2030年には65歳以上の10人に1人と予測されており、本人にとっても家族にとっても人事ではないものです。 日本で初めての開催となる今回の会議には、痴呆の当事者も20人程度参加する予定で、自らの言葉で辛い体験を語る場面もあります。
「ただの学会ではなく、本人や介護する家族が、第一線の研究者や医師らと対等に語り合える場です。参加した人は、この会議のすばらしさを実感するでしょう。」
三宅さんが初めて痴呆の人に向き合ったのが、京都市内の精神病院に研修へいった時です。 意味不明なことを言いながら、白髪のおじいさんが、体を動かし続ける。全くコミュニケーションがとれない状態に戸惑いながら、「これは放っておけない」と強く感じたといいます。
「人のやらないことをやりたい、という気持ちもあり、関心を持った。ただ、当時は痴呆について教科書らしい教科書もなかった」
独学が続く中、地元新聞社の「高齢者なんでも相談」という記事を通じて、痴呆啓蒙の草分けである早川一光医師の噂を聞きました。
「相談会の場に押し掛けていったのですが、先生の相談者を包み込むような温かさと人柄に触れ、相談に来た家族がほっとして帰る様子を目の当たりにして、自然と一緒に相談を受ける側になりました」
アルツハイマー病という病名も、まだ十分に浸透していませんでした。 相談者には診断を受けることを勧める一方、家族には介護の方法を伝えましたが、それですべてが解決するわけではありません。保健師に来てもらうなどの、限られた行政サービスの紹介に努めました。
そんな試行錯誤の中で、相談者の家を実際に訪問、実態を知って適切にアドバイスする
「押し掛け往診」が困難な状況を打開するきっかけとなりました。
「立派な介護をしているのに、自分のやり方に自身を持てずに悩んでいる家族がいた。 そういう方には、自分の体験を多くの人たちに伝えてもらいたいと考えた。 精神障害者の家族会の力強さを知っていたので、お互いに話を伝えあうことが大切だと確信したのです」
介護に携わる家族同士が意見交換する、という試みが「家族の会」の誕生につながりました。 痴呆の人の行き着く先は精神病院しかない、とも言われた時代で「介護者同士の家族の会が出来た」と評判になったのが忘れられないといいます。
日本での国際会議は、かねてからの念願でした。今はその準備に忙殺されていますが、本業は診療所長で、日頃からお年寄りと向き合うことが多いそうです。 体が衰えていく苦しみ、年をとって何もできなくなる悲しみを理解しようと、世界中の文献を調べています。
「痴呆はごく当たり前に遭遇する障害。ありふれた病気として理解する必要がある。 心と体を一緒に見る医療や介護の必要性も、訴えていきたい」
(8月17日 読売新聞)
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