お年寄りや障害者など、車いすを利用している人が外出先や旅先で気軽に借りられる福祉車両のレンタカーが少しづつ増えてきました。 これまでレンタカーの福祉車両は、ほとんど施設や団体に長期契約で貸し出されていましたが、短期用の台数を増やしたり、小型車を用意する会社もあり、個人でも利用しやすくなってきています。
神奈川県相模原市の児玉文子さんは、昨年(2003年)暮れに脳こうそくで入院した父親の一時帰宅のたび、自家用のワゴン車で送迎するうち、介助で腰を痛めてしまいました。 車いす用のレンタカーを探しましたが、大型車しかないうえに貸し出し中ばかり。 困っていたところで、日本レンタカーサービス(本部・東京都)がこの7月から、車いす一台をつめる軽ワゴンの福祉車両を計3台を神奈川県内の営業所に導入したと知り、利用してみました。
「車いすごと乗れるので、介助する私も楽だし、父も乗り心地が良く気に入った様子。今後も利用したい」と児玉さんは話しています。 料金は3時間4900円から(福祉車両のレンタルは非課税)。 「個人が気軽に借りられる小型の福祉車両はなかなかない。他の患者さんの家族にも教えてあげました」
日本レンタカーサービスは2004年3月からまず九州地域で、軽ワゴンの福祉車両を計10台配備しました。 それまでは施設や団体向けに長期間貸し出すカーリースの形をとっており、車いす数台を積める大型のものが多くを占めていました。 短期間貸し出す小型の車種の導入は、もともと「所有している福祉車両を車検や修理に出す間、代車として借りたい」という施設側の要望を受けてのことです。
ところが、ふたを開けてみると、「おばあちゃんを花見に連れていきたい」「買い物に行きたい」など、在宅介護をしている個人客からの問い合わせが相次ぎ、5ヶ月間で67件の利用の内、約6割が個人でした。
「日産レンタカー」を運営する日産ファイナンシャルサービス(本社・千葉市)も4月から、東京と神奈川で6、7台だった福祉車両を、15台に倍増しました。 料金は1日1万2000円からです。 やはり施設などからの「代車に」という要望に応えてのものですが、「個人のお客さまももちろん御利用になれます。需要があれば、今後全国に広げていきたい」と話しています
車いす利用者の旅を企画しているトラベルデザイナーのおそどまさこさんは「日本でもここ数年でようやく、障害者の外出や旅行が当然の権利とみなされるようになり、企業が需要に応え始めたのではないか。アメリカではリフトカーだけではなく、車いすの人が自分で運転できる車も借りられる。日本も早くそうなってほしい」と話しています。
(8月14日 読売新聞)
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