「障害者にやさしい街」をうたう東京都大田区が、両手足に障害を持つ全身性障害者らが社会参加のために介助者を伴って外出する障害者支援の移動介護「大田区委託介護支援費(移動介護)の支給決定に関する要綱」(昨年7月策定)を1日約1時間しか認めない要綱を作り、今年4月から大田区内の全障害者に適用している。
大田区は、一般区民の外出を役所や銀行の手続きなどの「社会生活上必要不可欠な外出」と、余暇活動などの「社会参加のための外出」にわけ、社会参加のための外出を、週8時間(月32時間)と想定。全障害者の「社会参加のための外出」を月32時間(1日約1時間)以内で支給するものとした。
区は「財源に限りがある以上、基準は必要」と説明。東京都在宅福祉課によると、都内の自治体でこうした上限を要綱に明記しているのは大田区の他に無いという。国や都は「サービスの支給量は障害の程度などに応じて決めるべきで、一律に『上限』を設けるのは好ましくない」との見解を示している。また、区は、一部の障害者団体の役員だけに上限を超えるサービスを支給しており、より批判が高まっている。
「必要不可欠な外出」を含めて移動介護の支給を月124時間から32時間に削られた全身性障害者の鈴木さん(52)は「区職員から要綱の説明を受けたのは3月に入ってから。『同意しないと4月からサービスを支給できない』と言われた」と話し、大田区長に撤廃を求める異議申し立てをしている。また、鈴木さんの代理人である弁護士は「一般区民の余暇活動を時間を基にするのはおかしい。要綱は障害者が社会参加する権利を奪う”外出禁止令”だと指摘する。
(2004年10月11日 毎日新聞より) |