第7回「人にやさしいまちづくりinあきた」のテーマは「勇気ではじまる」でした。インフラ整備が必ずしも万全ではない地域ほど、障害者や高齢者のかたへの様々な配慮を「ハード」でなく、「ハート」で補う必要があります。でも、困っている様子のかたに、なかなか一声がかけられない、という人もたくさんいるのではないでしょうか?そして、それはどうしてなのでしょうか。
講演会では、健常者が心身障害者等とどうコミュニケーションしたらよいか、「行動する勇気」の一歩について、第1部では香山リカ(かやま りか)さん(精神科医)から「あなたにもできること〜心のバリアフリーのために〜」と題して講演していただきました。
香山さんは最近「バリアフリー」という言葉を良く耳にするようになった一方で、自分とは違う、「異質なもの」を一切自分の身の回りから排除するような風潮が高まっていることを心配されていました。
例として、オウム真理教の信者の子供の転校反対運動や、北海道小樽市の銭湯の外国人の入湯拒否、精神障害者施設の建設反対を訴える住民運動などを挙げて、何も事件を起しているわけではないのに、最近は「異質なもの=いけないもの」と捕らえて、身の回りの安全を最優先にするあまり、心に「バリア」を作ってしまっている人達が増えているという印象を持たれていました。
異質なるものに対して抱く感情は、間違った知識や先入観によって「恐れ」や「嫌悪」に変わってしまうこともある。正しい知識を持つ努力や触れあうきっかけを作る「勇気」があれば、むしろ「異質だからこそ、おもしろい」と思えるし、お互いに楽しく過ごせることができるのでは?と訴えていらっしゃいました。
講演会第2部のパネルディスカッションでは、秋田で障害をもちながらも自らの夢を実現している3人の方をお招きし、挫折から勇気を持って立ち直った経験や周囲の協力などについて語っていただきました。異なる障害をもった3人の本音を聞き、「勇気」の大切さを感じてもらおうというものです。第一部で講演をしていただいた香山さんにはコーディネーターとしてご登壇いただき、活発なやり取りが行われました。
三戸 学(さんのへ まなぶ)さんは、秋田市で中学校の数学の先生をしていらっしゃいます。生まれつきの脳性まひで、身障者手帳一種一級という重度障害者ですが、学校の先生になるという夢をあきらめず教員採用試験に挑戦し、見事その夢を果たしました。現在は生徒ともっと触れあい、関わりたいということで「担任」になることが夢だそうです。
渡辺幸哉(わたなべ ゆきや )さんは、オフロードレーサーで男鹿市にお住まいです。交通事故で頚椎損傷四肢まひになり、1年8ヶ月の入院生活ののち、車椅子でも生活できる住宅を建てられました。現在は手のみで運転できるように工夫されたスペシャルカーで、オフロードレーサーとして健常者と変わりなく己の壁への挑戦を続けていらっしゃいます。
戸嶋由美子氏(としま ゆみこ)さんは、秋田県立ろう学校の先生をしていらっしゃいます。生まれつきの聴覚障害ですが、まわりの家族や友だちの支援のおかげで、大学に行くまではそれほど困ることはなかったそうです。ところが、大学はそれまでと全く違う環境だったので、授業を受けるための様々な支援を受けて無事大学を卒業し、聴覚障害者として初めて県立ろう学校の教壇に立つことができました。
皆さん各々障害はあっても、夢をあきらめず自分の人生に立ち向かっている姿を見て、聞き入っていた来場者の皆さんからは「元気をもらえました」との感謝の声とあたたかい拍手が送られました。
(写真前列左二番目から、三戸さん、香山さん、戸嶋さん、渡部さん。ほかは手話通訳ボランティアの方々、BFNのスタッフです。)
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